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【つくば国際戦略総合特区】大出力・低放射化BNCT用照射装置・実証機を用いた非臨床試験を開始

つくば国際戦略総合特区事業の一つである「次世代がん治療法(BNCT)の開発実用化」プロジェクトでは、産学官連携による次世代がん放射線治療(BNCT)の研究開発グループがつくば型BNCT用照射装置・実証機の医療導入を目的とした非臨床試験を2021年11月から実施します。

茨城県、つくば市、つくばグローバル・イノベーション推進機構(TGI)は、研究機関や企業などと連携し、つくばにおける科学技術の集積を活用したライフイノベーション及びグリーンイノベーションの創出を通じて我が国の成長・発展に貢献することを目的として、つくば国際戦略総合特区事業を2011年12月より実施しています。

そのプロジェクトの一つである「次世代がん治療法(BNCT: ホウ素中性子捕捉療法)の開発実用化」(参考1参照)では、2021年11月より、筑波大学と高エネルギー加速器研究機構(以下,KEK)が中心となり、つくば型BNCT用照射装置・実証機の医療導入に向けた臨床試験に先立ち、非臨床試験を実施します。本試験は、合同会社iAc、ステラファーマ株式会社、株式会社日立製作所,株式会社千代田テクノル、株式会社NAT、株式会社新日本科学の関連各社の協力を得て実施するものです。

BNCTは、中性子線と、がん細胞に選択的に集まる特性を有するホウ素薬剤を組み合わせて、がん細胞を選択的に破壊する放射線治療で、未だに治療法が確立されていない難治性の頭頸部がんや悪性脳腫瘍などの治療法として期待されています。

本プロジェクトでは、病院内に設置可能な小型のBNCT照射装置・実証機“iBNCT001”(参考2参照)を開発整備し、治療を実施できる中性子ビームを発生できることをすでに確認しています。iBNCT001は、研究用の大型研究用加速器施設であるJ-PARC(東海村)の加速器技術を基盤に、医療用に最適化することで中性子ビームの大出力化を実現し、短時間での治療を可能とするコンセプトで設計されています。さらに、治療に伴う装置等の放射化(治療に伴い装置そのものが放射線を出すように変化すること)を低減し、患者や医療者に対する安全性にも配慮しています。同実証機は東海村にある「いばらき中性子医療研究センター」内に設置されています。

今回実施する非臨床試験は、iBNCT001での臨床試験実施に先立って必要となるもので、細胞や小動物(マウス)に対する照射試験により、iBNCT001が発生する中性子ビームの生体に対する安全性と、ホウ素薬剤と組み合わせたときの安全性や有効性を確認します。その結果を踏まえて、同装置を用いた臨床試験を速やかに実施する予定です。

(参考1) 《ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)について》

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)は、中性子線とホウ素薬剤を組み合わせた放射線治療の一種です。BNCTの治療原理は、ホウ素の同位体である“ホウ素10”を含有し、かつ、がん細胞に選択的に集まる特性を有するホウ素薬剤を事前に投与し、このホウ素薬剤ががん細胞に集積した時点でがん病巣に中性子線を照射してがんを治療します。がん細胞内のホウ素10は中性子と核反応を起こして、細胞を強力にダメージを与えることのできる2つの粒子:α線(ヘリウムの原子核)とヘリウム原子核を発生します。この2つの粒子は人間の体の中では10µm以下しか飛ばず、この距離はちょうど細胞1個分の大きさです。よってがん細胞の中にだけホウ素薬剤があれば、がん細胞だけを破壊することができます。原理的には正常細胞の中にがん細胞が浸み込んでいるようながんでもがん細胞だけを破壊して正常組織を温存することができます。図1にBNCTの原理を示します。本非臨床試験では、ホウ素薬剤としてステラファーマ社のBNCT用ホウ素薬剤「SPM―011」を用い、iBNCT001が発生する中性子線と組み合わせて小動物への照射試験を行います。

図1 BNCTの原理

(参考2) 《BNCT照射装置・実証機:iBNCT001》

BNCTは、治療に中性子線を用いるため、これまでは研究用の原子炉を使って臨床研究が行われ、優れた臨床成績を残していました。しかし原子炉では、施設を病院に設置できないなどの問題から、治療法として確立できていませんでした。この状況に対して近年の加速器技術の進展により、病院に設置可能な小型の加速器を使って、BNCTに必要な強度の中性子を発生できるようになり、現在、国内外で多くのBNCT用の加速器中性子照射装置の開発が行われています。これを踏まえて当グループでは、つくば型BNCT用照射装置・実証機:iBNCT001を開発整備しています。iBNCT001の加速器には、研究用大強度加速器中性子発生装置であるJ-PARCの直線型加速器(リニアック)をベースに、BNCT専用に改良、高度化したリニアックを開発整備しました。また、中性子を発生する標的材にはベリリウムを組合わせています。ベリリウムに照射する陽子のエネルギーを比較的低い8MeVに設定して中性子を発生することで、中性子による装置の放射化を低減できる設計となっています。また、将来的に原子炉に匹敵する強度の中性子を発生できる設計となっています。図2にiBNCT001の概要を示します。

図2 つくば型BNCT用照射装置・実証機:iBNCT001の概要

【発行元】
一般社団法人つくばグローバル・イノベーション推進機構

国立大学法人筑波大学

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

合同会社iAc

ステラファーマ株式会社

株式会社日立製作所

株式会社千代田テクノル

株式会社NAT

株式会社新日本科学

【問い合わせ先】

筑波大学 陽子線医学利用研究センター 熊田博明
TEL: 029-853-7100
Email: proton_therapy(at)pmrc.tsukuba.ac.jp

一般社団法人つくばグローバル・イノベーション推進機構 犬塚隆志
TEL: 029-869-8030
Email: tgi(at)tsukuba-gi.jp

※(at)を@にかえてください。